ツイノベとかのまとめ

twitterで投稿したツイノベをまとめています(@ukeiregaohayai)

遙かなる時空の中で6

記憶は遠い蜃気楼のようだ。時が経つにつれて曖昧に揺らめいて、私の心の弱い部分が、なにかを忘れさせようとする。叶えられた思い、代わりに傷つけたもの。何かを守ろうとする強い力は、別の何かを破壊する力になる。私の中の龍が、力が吼える。忘れていい…

ダリウス

紫煙をくゆらせるダリウスというのも妙に絵になる。「ダリウスって吸うの?」「必要があれば嗜まれることもありますよ」部屋で見つけた年代物のパイプは上品な艶があって、なめらかなその形はどこか色っぽさも感じる。「……というか、何持っても色っぽいし」…

政虎

「ルード、お前腕落ちたか」「勝手に邸に上がり込んだのは悪口を言うためですか」「ルードの料理は絶品だよ、俺が保証する」コハクもフォークをくわえてきょとんとしている。「変わったのは料理じゃない」と言いながら、ダリウスはキッシュを口に運ぶ。「虎…

村雨

「髪、鬱陶しくないですか?」「ん?……ああ」しきりに髪に手をやるのは無意識だったらしい。ふと、いつかダリウスが前髪を切ってくれたことを思い出す。それを何気なく口にしたら、机にかじりついていた顔がこちらを向いて、あっと言う間に近づいてきた。「…

ルードハーネ

その指は意外なほど軽やかな旋律を紡ぎ出した。「前に習ってたから、少しだけね」と何でもないことのように呟く。ピンと伸びた背中。ペダルを踏むたびに煌めくブーツの飾り。気を集め、気を喚び、気を与え、気を封じる。神気ばかりと思っていた両手の中に、…

コハク

蠱惑の森で、洋菓子についていたリボンで戯れにコハクの髪を結ったことがあった。「そんなリボン、取ってあったの?」「だって梓さんからの贈り物だもの」あなたがくれたものは何ひとつ失くさないし、誰にも渡さないよ。そう言ってコハクはリボンを髪に結び…