2020-10-26 清盛 遙かなる時空の中で3 あの夜の月はどんな輝きを放っていただろうか。見上げた空は黄昏色、その向こうから顕れるべき光を想う。両手の中に総てがあると信じることは容易く、しかしその幻影を喪うこともまた同じく容易い。どこからか迷い込んだ揚羽蝶は宙に伸ばした私の手をひらりかわして、色のない庭を舞っている。