ツイノベとかのまとめ

twitterで投稿したツイノベをまとめています(@ukeiregaohayai)

信行

その慟哭を耳にして、ああ本当に「風」は吹いているのだと思った。震える両手は酷く血色が悪く、青白い爪がぼんやりと夕闇に浮かんでいる。「僕は、」先ほどから繰り返すのはこの言葉。「僕は、」先に続く音を探るような押し殺した声。「僕は、」「僕は、」あなたは、何を望むのですか。


「"好きになってしまうから"?」「……はい」珍しくおろした髪が邪魔をしていて、表情は見えない。口元を覆って僕を拒む小さな手に触れると、ちらりと覗いた赤い耳が震えた。――それはきっと、彼女を守るためのものだったのだろうが。「もうとっくに手後れなんじゃないか」