ツイノベとかのまとめ

twitterで投稿したツイノベをまとめています(@ukeiregaohayai)

家康

明智桔梗は死にました」桜が咲きました。雪が降りました。そんな口調で言ってのけた光秀殿の視線は、最後まで僕のそれと絡むことはなかった。「あれは何という花ですか」花の名を尋ねるのは、名も知らぬひと。「クチナシと言います」いつかその花を贈ってくれた、死んだはずのひと。

あかね

船岡山に登ると、視界が空と都になる。「京」と呼ばれるこの場所は、ここから見渡せる分しかない。その小さな世界に、確かに息づくものがあった。祈りはやがて深さを増して、告げる想いさえなくなってゆく。日々を生きるものたちへ、白き龍とその神子から、永遠の桜吹雪のような祝福を。

村雨

「髪、鬱陶しくないですか?」「ん?……ああ」しきりに髪に手をやるのは無意識だったらしい。ふと、いつかダリウスが前髪を切ってくれたことを思い出す。それを何気なく口にしたら、机にかじりついていた顔がこちらを向いて、あっと言う間に近づいてきた。「な、なんですか」「……ガキだな」

ルードハーネ

その指は意外なほど軽やかな旋律を紡ぎ出した。「前に習ってたから、少しだけね」と何でもないことのように呟く。ピンと伸びた背中。ペダルを踏むたびに煌めくブーツの飾り。気を集め、気を喚び、気を与え、気を封じる。神気ばかりと思っていた両手の中に、こんなものが隠されていたなんて。

光秀

「あやつの愛は重いぞ」『愛』を語るには落ち着きすぎた口調に感じるところがあり、思わず聞き返した。「試すことでしか人の心を量れんのだろう」心を試して、得られるものと失うものは何だろう。「……光秀殿に信頼されてみせます」そう言うと、信長様は満足げに目を細めた。「愛は信頼か」

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