梓
記憶は遠い蜃気楼のようだ。時が経つにつれて曖昧に揺らめいて、私の心の弱い部分が、なにかを忘れさせようとする。叶えられた思い、代わりに傷つけたもの。何かを守ろうとする強い力は、別の何かを破壊する力になる。私の中の龍が、力が吼える。忘れていい記憶なんて、きっとひとつもない。
パワーバランス(おべいみー/ルシファー)
書斎のドアをノックすると、返事より先に名前を呼ばれた。
「よく分かったね」
「どうせみんな酔いつぶれたんだろう」
「……よく分かったね」
「俺を誰だと思ってる」
記憶は遠い蜃気楼のようだ。時が経つにつれて曖昧に揺らめいて、私の心の弱い部分が、なにかを忘れさせようとする。叶えられた思い、代わりに傷つけたもの。何かを守ろうとする強い力は、別の何かを破壊する力になる。私の中の龍が、力が吼える。忘れていい記憶なんて、きっとひとつもない。
書斎のドアをノックすると、返事より先に名前を呼ばれた。
「よく分かったね」
「どうせみんな酔いつぶれたんだろう」
「……よく分かったね」
「俺を誰だと思ってる」