望美

その浴室からはあの観覧車が見えた。磨り硝子の向こうから漏れ聞こえる歌はあの頃ＭＤに入れていた曲によく似ていて、ふと何も知らぬ頃に思いを馳せる。長い旅路は永劫回帰の円環だ。陰陽の全てはぐるりぐるりと巡り巡って、やがて龍脈に還るのだろう。私もまた還り、そしてこの想いもまた。

鏡を覗き込んで思う。いつの間にか彼より年上になってしまった。図書館にあった彼の伝記では、まるで見てきたかのように克明な描写でその最期が語られていた。かつて私が巡り歩いてきた時空が多層的に同時に存在するのなら、私はどれだけのものを失い、どれだけのものを手に入れたのだろう。

何度巡り逢いを繰り返したとしても、絆は確かに紡がれてここにあると信じていたい。運命の糸を撚り合わせて時空を形作る。そのたびに新しい歴史が、新しい彼らが、新しい私が紡がれていく。何度目だっていい。時間がかかったっていい。いいから、どうか、今度こそ。「どうか私を愛して」