ツイノベとかのまとめ

twitterで投稿したツイノベをまとめています(@ukeiregaohayai)

先輩の横顔が逆光で切り絵のように浮かび上がる。「どうしたの?早くしないと暗くなっちゃうよ」陰り始めた陽が、無防備に揺れる長い髪を照らす。「すみません、今行きます」こうして想いを切り取って、切り取って、切り取るその瞬間が永遠の至福なんです。この絵の中で、あなたは永遠だから。


ベッドに腰掛けた先輩の唇を盗み見ていたら、窓の向こうがいつの間にか黄昏れていることに気づいた。ぽつぽつと星が顔を見せる空を背景にして、先輩が俺に話しかけている。「カーテン、閉めますね」。星は読まれることなく、ただそこに輝けばいい。星の監視から逃れて、俺はあなたに恋をする。


ハッピーエンドが好きだ、と先輩は言う。何もかも都合よくおさまるわけはないけれど、私は私の我が儘を突き通すよ、と言う。ただ俺が生きていることだけが先輩の望みなら、そんなのは我が儘のうちに入りませんよ。先輩が思うよりもずっとずっと、俺は我が儘なのに。


ハッピーエンドがいい、と私は言った。譲くんはよく「先輩が幸せならそれで」なんて言うけど、私はそれじゃ足りない。譲くんが隣で笑って、隣で泣いて、隣で名を呼んでくれないと足りない。私は我が儘を突き通すよ、と冗談に真を混ぜる。譲くんが思うよりもずっとずっと、私は我が儘なんだよ。


ふとしたときの横顔が、夢の中のそれと重なってハッとする。このところ夜な夜な見る、可憐な横顔を「守りたかった」夢。朝一番に浮かぶその過去形の言葉が堪らなく嫌なのに、振り解きたいと思えば思うほど強く夢に見る。哀惜ではもう遅い。時空を越えて夢を越えて、俺はあなたを守りたい。


「譲くん、私はいつまで「先輩」なのかな」「え?」さすがに名字呼びではなくなったけれど、こうして揃いの湯呑みを使うようになっても、彼は私を先輩と呼ぶ。「じゃあ俺のことも名前で呼んでくれますか」「ゆ、譲……くん」ほらね。そう言って譲くんは照れくさそうに笑う。「無理でしょう?」


どうぞ、と差し出されたのは、いつもと同じ夫婦茶碗の大きいほう。初めこそ逆だと突き返していたが、「でも先輩、俺の淹れるお茶好きでしょう?」と言って、ついに聞いてはくれなかった。「……譲くんさ、性格変わったよね」「俺は昔と同じですよ。変わったのは」――変わったのは、星の巡り。


こういう靴をなんと呼ぶのか知らないが、大人の女の人が履いているやつだ。そう思って顔を見てみると、心なしかその頬と唇がいつもよりほんのりと赤い。化粧までしているのか。かかとの高い靴のせいで先輩と俺の肩が並ぶ。目も合わせられないのに、俯いた先からも大人の女性のにおいがする。


少し前から、雰囲気が変わった。どう変わったか具体的に表現するのは難しいけれど、表情が変わった。言葉選びが変わった。立ち振る舞いが変わった。ここではないどこかを見据えたような、不思議な覚悟を秘めた瞳。その瞳に、告げられる想いなどない。ただどうか、笑顔だけは奪われないでいて。