サザキ

いきなり首筋に噛みつかれて、驚きより先に疑問が出る。「突然どうしたの？」「いやあんまり別嬪さんなもんで、人形みたいだと思ったんだ。ちゃんと血が流れてるか確かめたくなった」「なにそれ」スマンスマンと笑い、サザキは婚礼衣装を纏った私を大きな翼で包み込んだ。「綺麗だ、姫さん」

翼を大きく震わせて、サザキは空高く舞い上がった。地を離れた私の両足はぶらりと頼りなく宙を踊る。「ねえ、靴が脱げそうなんだけど！」「そんなもんなくたって、俺がずっと抱いて飛んでやるさ！」向かい合うたび、そんなことを言う。切り絵のような翼の影が風に揺れる草原を駆けていった。