ツイノベとかのまとめ

twitterで投稿したツイノベをまとめています(@ukeiregaohayai)

頼忠

その後ろ姿が美しすぎて、私はしばし見とれた。秋風に揺れる衣の裾。小さな歩幅で懸命に歩く脚。少しだけ振り返って「今日は風が強いですね」と語る唇。「頼忠さん、どうかしました?」と首を傾げれば、少し伸びた前髪が額でさらりと揺れる。はらはらと舞う紅葉は、私の心の内に積もっていく。


町を覆う白の眩しさに目を細める表情がやけに魅力的に見えて、私はしばらくその顔に見とれた。ふと視線がぶつかって慌てて目を逸らすと、その視界に武骨な手が差し出される。「お足下が悪うございますから」前を行く足取りは頼もしく、繋いだ大きな手は温かい。雪は今日もまた降り積もる。


くしゃみの声に妙な響きを感じ取ってしまい、堪らず部屋を辞した。今日は館でお過ごしになるというので側に控えていたが、どうにも耐えられない。女房に声をかけて庭に降り、肺の中までこの銀世界が行き渡るように大きく息を吸う。今一度息を吐き出せば、私はただの「天の青龍」に戻れる。