ツイノベとかのまとめ

twitterで投稿したツイノベをまとめています(@ukeiregaohayai)

サタン

唇が離れた瞬間、ごく小さな呻き声が漏れた。「…いま俺の魔力吸い取ったな?」と問う声は少しかすれている。「何もしてないけど…」――けど、いつもの余裕ぶったキスを、ぜんぶ壊してしまいたいと願ったのは確かで。「じゃあ返すから、もう一回」幾度も幾度も、混ざり合うなにかを嚥下して。




すっかり脱力した両手から甘言学のテキストをそっと回収し、ブランケットをかけてやる。伊吹は寝ぼけているのか寝言なのか、「サタンのにおい…」と呟きながらブランケットを鼻先まで引っ張り上げて、また寝息を立て始めた。「…まったく、君の甘言は俺のどの欲を刺激しようとしてるんだ?」


「そろそろ離して」と言っても、尚もサタンは私の頭やら首筋やらを執拗ににおう。生暖かい呼気で耳の後ろがじわりと湿る。「シャワーも浴びてないし」…浴びていればいいわけではないけれど。「つまり、シャワーを浴びてからまた俺の部屋に来てくれるってこと?」…だからそうじゃなくって。


嘘に気付いたのはいつのことだっただろう。眠れない夜、サタンは私によく眠れる魔法をかけてくれる。知らないまじないの言葉を囁く、普段より低くて優しい声。ふわりと目尻に落とされる口付け。「眠れない」嘘と「まじない」の嘘に気づかないふりをして、今日も私たちは温もりを分け合う。


「ごめん……」「いや、俺もそこまで調べていなかった」デートに誘った美術館は、今日に限って休館日だった。「野外美術館は無休だったはずだから、見ていかないか」といって、サタンが手を差し出す。その瞳は怒るでも落胆するでもなく、ただ揺れる柔らかな緑を映して、優しげに微笑んでいた。


「レヴィ、なんだあれは」「痴話喧嘩」サタンはなんやかんやでモテる。先日参加したイベントでもなんやかんやあったのが尾鰭がついて伊吹の耳に入り、弁明したいらしいサタンが必死に伊吹を追いかけている。「焦るサタンってレアじゃない?」「かもな」ルシファーと二人、レアな弟を眺める。