ツイノベとかのまとめ

twitterで投稿したツイノベをまとめています(@ukeiregaohayai)

龍馬

お嬢に先に乗車するように促して、運転席の後ろにその泣き顔を隠した。行き先を述べてドアが閉められたタクシーの車内は暗い。窓の向こうから街灯の光がぼんやりと差し込み、俯いたお嬢の横顔をかたどっている。涙をたたえたその顔は不思議と艶めかしく見えて、気遣うより先にドキリとした。


つまみ細工の花飾りを弄びながら、その日のことを思い出す。「お嬢の気に入るかは分からないが」。そう言って差し出された箱は、大きな掌の上ではとても小さく見えた。「周りのヤツに聞いて回って、一番評判のいいのを選んだんだ」。季節は巡っても、ただひとつ枯れない花が私の髪を飾る。


あしたいいことあるさと笑う その唇から漏れた不安にくちづけを 夜明けを待つのは国とあなたと私と世界


恥ずかしくてどうしようもなくて、限界が近い。けれどすっぽりと抱き込められた身体は、よじればよじるほど深くその広い胸に沈み込んでいく。「これ以上されたら、わたし死んでしまう」と言ったら、抱きしめる力がさらに強くなって、耳に熱い吐息がかかった。「そのときは一緒だ」