ツイノベとかのまとめ

twitterで投稿したツイノベをまとめています(@ukeiregaohayai)

コハク

蠱惑の森で、洋菓子についていたリボンで戯れにコハクの髪を結ったことがあった。「そんなリボン、取ってあったの?」「だって梓さんからの贈り物だもの」あなたがくれたものは何ひとつ失くさないし、誰にも渡さないよ。そう言ってコハクはリボンを髪に結び、「似合う?」とおどけて見せた。


「ダリウスさんにもらったんだ」と言って、コハクは腕時計を見せてくれた。白い手首に、革のベルトと金の留め具がつやりと光る。「これで人に聞かずに時間が分かるのは便利なんだけど、ちょっと残念かも」「どうして?」「だって、時間が分かったら梓さんを引き留められなくなるじゃない」


唇を通じて陰の気が流れていってしまう気がする。どきどきして、ふわふわして、恥ずかしくて、けれど心地良くて、つい気のコントロールが緩む感覚がある。変な感じはしない?大丈夫?と尋ねたら、そのぶんおれが陽の気をあなたに送るから、だからキスすると気持ちいいだろ、と言われた。


唇を通じて不思議な力が流れてくる気がする。どこか涼しげで、気持ちが落ち着くようで、肩に触れる手の温かさと調和して、つい時間を忘れる。そんなとき、変な感じはしない?だなんて聞いてくるから少し驚いて、あなたが停滞を分けてくれなかったら、おれはどうなるんだろう、と考えた。


コハクにとって、映画館はポップコーン屋さんだ。悩みに悩んで味を決めたかと思うと、今度はドリンクの表を眺めて唸っている。「もし口に合わなかったら私がもらうよ?」と助け船を出すと、「それなら梓さんに先に飲んでもらったほうが、おれ役得だなあ」というぼやきが返ってきた。