ツイノベとかのまとめ

twitterで投稿したツイノベをまとめています(@ukeiregaohayai)

エゴとブロンド(ときレス/伊達京也)

サイドテーブルに左腕を伸ばし、手探りで眼鏡を掴む。
霞む両目をしばたたかせながらプライベート用のスマホを握りしめて、今にも手放しそうな意識を現実に絡みつかせる。

眠い。
画面に灯りがつくなり、昨夜返信できなかった書きかけのメールが表示されていた。
そういえばそうだったか、と読み返して、読み返すなり急いで破棄する。
ダメだダメだ。ダメ。これはダメだ。こんなの送ったらダメだ。
面白いくらい瞬時に目が覚めた。何言おうとしてたんだ俺は。

深夜の自分を信用してはいけない。特に深夜のメールはいけない。
疲弊しきった脳と脱力しきった指はうっかり伊達京也を外界に放出しそうになる。
X.I.P.のキョウヤは、テレビでラジオでネットでライブで、何度も何度も繰り返し再生されて、ビデオテープのように擦り切れていく。
擦り切れたテープにちらちらと混じる、どこかのだれかの何かのノイズ。
華やかな衣装と鮮やかな金髪はその煌めきで醜いノイズを覆い隠してくれる。
この鎧は完璧だったはずなのに、あいつはいとも簡単に髪をかき分けて、情けないノイズまみれの俺を覗いた。
ホントに、悪い子ちゃんだな。

互いに忙しければ一週間二週間メールの返信が遅れることはざらにある。
だから急いで返事をする必要もなかった。
しかし、昨夜のこの熱をなかったことにするのも、なんとなく口惜しい気がする。
どうしようか。伊達京也はどんな言葉で熱を伝えようか。

あいつのメール以外にも何かメールが着ているらしい。画面の端で無機質な光がチカチカと瞬きをしている。
漫然と点滅しつづける通知ランプをぼうっと眺めていると、突然鋭く高い電子音が響いた。
そうだった。そういえば今日はまだ目覚まし時計の音を聞いていなかった。
なんだか一日に二度も目が覚めたような気分だ。

早朝の自分も信用しちゃダメだ。
「ゴメン、寝落ちした。おはよう。いってきます」
それだけ書いて、持て余した熱を0と1に還元した。